キッチンで、珈琲豆を自家焙煎しながらふと思ったのです。
もしも自分が縄文人みたいに自給自足の村から東京に出てきたばっかりだったなら……
とつじょ、まわりにある日常がミラクルだらけに見えた!
この焙煎器ひとつとってみても。
キッチンユニットも。
冷蔵庫にしても、電子レンジにしても。
20代で働きはじめてからの35年ちょっとで
いま家にあるすべてのモノの価値に匹敵するほど、
私は誰かの役に立ってきたんだろうか? と。
そんなはずはない。
なのに月給や報酬を得て、それでこの身の回りのものをぜんぶ買い集めることができてしまっている……。
これは、スゴイことだな!
たとえばこのキッチンユニットを私がほしくなったとして。
現代から縄文へタイムスリップして、こんなモノがあったら便利だっていう説明ができたとして。
作業が得意な人にお願いして、何十日もかけてつくってもらったとして。
その労力に匹敵するほどのお礼を、私にできるとはとうてい思えません。
圧倒的に、人口が多いから。
同じように「こんな道具があったらほしい」って思う人がいっぱいいて
大勢がお礼(金銭)を出し合うから、マスの理論でいろいろなモノが開発されて生産できている、と。
それはもちろん、そうなんだろうけれども。
だけど珈琲豆を煎りながら、たまたまふと、そんなことを思ってみたら、こんなにたくさんの便利なモノに囲まれていることの不思議さと、ひれふしたいくらいの感謝でいっぱいになってしまったんです。
スローな暮らしをすると、思いつきが多くなる
それもこれも、コーヒー豆を自宅のカセットコンロで焙煎する、なんていう原初的な動作をしてみたから、思いついたことだったように思います。
この〝まわりじゅうのありとあらゆるモノに感謝したくなる感覚〟はまさに、私が以前、単行本で『瞬間出家』と書いた状態に近いと思います。
お風呂をマキで焚くとか、お米もボタンひとつじゃなく鍋で火加減気にしながら炊いてみるとか。少しだけ手間暇をかけることを習慣にしてみると、今日の私のような思わぬ発見が、日常のなかにはたくさん転がっていると思います。
簡単、便利、時短。
そのためにワンタッチで、ボタンひとつでなんでもできる世のなかにしてきたのですが、結果、多くの人が疲れ、精神を病み、生きがいをうしなっているんです。
縁空ファンの皆さまには、騙されたと思って、原初的な作業を日常生活にとりいれてみることを提唱したいです。
とくに朝の時間が自由になるテレワーカーの皆さんや、リタイア世代のかたには、生豆から珈琲を自家焙煎する、ということをオススメします。
毎朝20分もあれば、新鮮な自家焙煎珈琲が飲める
そもそもは、私の息子が珈琲を飲むと必ずお腹をこわす、というところに端を発しています。
なんと、珈琲でお腹をこわしたり、胃が荒れたりするのは、珈琲そのものが合わないのではなく、焙煎されてから何週間もたっている珈琲豆の〝酸が悪さをするから〟らしいのです。
▼日常的に自家焙煎をしてみようと思うキッカケになった本は、こちら
神楽坂にあるイッテル珈琲という店。ここではなんと、1杯ずつその場で生豆から焙煎して、珈琲を淹れてくれるんです。
焙煎といっても大掛かりな機械ではなく、こちらのハンディな焙煎器を、家庭のコンロ(カセットコンロでもオッケー)に乗せて使うだけ。深煎りでも、10分くらいで焙煎できます。
詳しくは上記の本を読んでいただきたいのですが、なんと珈琲豆は、生豆の状態なら2年くらい劣化しないのですが、焙煎されたら1週間で酸化してしまうんだそうです。
珈琲を飲んで胃が悪くなったり、お腹が痛くなったりする人が多いのは、酸化が進んだ豆から淹れた珈琲を飲んでいるからなんだそうです。たしかに愚息は、「エスプレッソ珈琲なら、お腹をこわさない」んです。だから、「アルバイトして貯めたお金で、エスプレッソマシーンを買う」とまで言っていました。
いや、あれは4~5万円もするし、掃除がとてもたいへん。大きいし場所をとるし重たい。だいたい、ふつうの珈琲だと必ずお腹をこわすのに、エスプレッソなら大丈夫というワケがわからない。たまたまそのお店の珈琲豆が体質に合っただけだったとすると、大枚はたいて無駄になってしまう……と、マッタをかけていたところへ、イッテル珈琲に出会ったのです。
エスプレッソが出てくるのは、コース料理のあとです。つまり、記念日にしか行かない超高級店でしかエスプレッソは飲みせんから、新鮮な状態の豆で淹れられていたという話だったんだと思います。
理由がわかったので、はじめてイッテル珈琲を訪れたその場で、焙煎器と生豆を購入してしまいました。以来、1ヵ月あまりほぼ毎日、自家焙煎珈琲を飲んでいます。
1日1杯以上飲むとすぐに胃が痛くなっていたのですが、たしかにこれなら2杯以上飲めます。
健康志向のかた、身体のためにも、精神衛生のためにも、ぜひお試しいただきたいです。