プリミティブな時間を、毎日ちょこっとずつ

  • 2025/06/17
  • 縁空のオケイ/勝 桂子

幸福度ランキング、がアテにならない理由

 ハーバード大学を中心とする研究チームが、世界22カ国を対象に行った幸福度調査で、日本が「最下位だった」と報じられたことについて、知人のF僧侶と意見交換しました(日経新聞・2025年5月1日)。

 F僧侶は、「このニュースに、どこか違和感を覚えた方もいらっしゃるのではないでしょうか」と問いかけます。

 そもそも、「幸福」をどう感じ、どう表現するかは、国や地域、文化によって大きく異なり、「幸福度」を一律に数値化するという発想そのものに、少し距離を感じる、とのこと。

 日本人は、「あなたは幸せですか?」と尋ねられると、「まあまあです」「普通ですね」と控えめに答えることが多いもの。親しい人との会話では、「うん、幸せだよ」と微笑むこともあるにもかかわらず、誰に見られるかもわからないような公的なアンケートなどでは、じっさいに感じているよりもだいぶ控えめに答えてしまう性向が強いのではないかというのが、F僧侶の推論です。

 たしかに、日本人は潜在意識のどこかで、「人からどう見られるか」ということを気にしがちであるということがしばしば指摘されます。脳科学者の中野信子さんはこの理由について、「幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンを運ぶ、セロトニントランスポーターというタンパク質を、遺伝学的にそもそも増やしづらい傾向にある人が、日本人には際立って多い」と多くの著書セミナーのなかで述べ、その理由を災害が多いことなどに帰結させています。

 こと3・11以降は、その傾向は顕著になっているのかもしれません。この狭い国土のなかにいまも、震災から復興できていない人々がいるとたえず思いやってしまう。学校や会社へ来られていない仲間がいると思いを寄せてしまいがちな人々。自らが今日を楽しく過ごすことができていても、手ばなしで露骨に喜びを露わにはできない――つまり、真の幸福度をアンケートではかることは困難なのだと。なるほどナットクです。

欧米人(キリスト教徒)は「GODのおかげで幸せ」だから、喜びを露わにできる

 たしかに日本人の場合、欧米人のようにポジティブに〝I’m happy!!!〟とは言えない人が多い気がします。そこには常に、「I’m happy!!!」とは言えない人への配慮があり、慈悲があるともいえます。

 でもそれは欧米人が配慮しない民族だということではありません。
 かれらは、Godを主体(=Mainの存在)として(※)、Godを介してほかの人々とつながっているので、「Godのおかげで幸せだ」ということを表現しているから、おおっぴらに〝I’m happy!!!〟と言えるのでしょう。

 ちょっと話はそれますが、subjectを日本語に訳すと「主体」とか「主題」となります。
 でも、おかしいんですよね。subというのはあくまで何かに属する下位の存在を示すときに使われる接頭語です。「なぜ主体とか主題のことをかれらは〝sub〟jectと呼ぶのだろう?」ということを以前、ある宗教学者のかたと語らいました。結論として、

「MainたるGod(父と子と聖霊の〝三位一体〟の〝父〟)がいて、人間はその力を聖霊を介してうけとる〝子〟にすぎないからだ」

っていうことになりました。

 このことから推論するとわれわれ日本人も、なにかにつけて「お天道さんのおかげ」と思えていたころにはもっと、おおっぴらに「幸せだ!」と言えていたんじゃないかという気がします。

 昔ばなしに登場するいいおじいさん、おばあさんは、蓄財もないのに幸せそのもの、ですし。

日本人の潜在意識に刻まれた精神性の高さ

  • 礼儀正しく列に並ぶ
  • 公共の場にゴミを置き去りにせず持ち帰る
  • 緊急時でも、「どうぞお先に」と譲り合う

 SNSなどでも海外の人々から驚かれるこうした日本人の特性は、古来より村長から村民へ、親から子へ、子から孫へ……と受け継がれてきた信仰のなかから、われわれの潜在意識の奥深くに刻み込まれた精神文化が、所作に表れた結果といえます。

 たとえ幸福度を露わにできなくとも、日本人の多くは「慈悲深い民族だね」と言われたら嬉しいのでしょうし、じっさいSNSなどでも海外の人から賞讃されたというエピソードはたくさんの同意票が投じられています。

 とはいえ昨今、会社へ行きたいのに行かれない、学校へ行きたいのに朝になると体調不良で行かれない、といった人が急増していることは大きな課題です。いかに譲り合えても、慈悲深いといわれても、日々が鬱々として社会生活をうまく送ることができず、長いこと部屋にひきこもってしまう人が増えているという現状は、なんとかすべきでしょう。

ヒト以外の環境を感じとれてこそ、平穏でいられる

 そこで縁空では、GODを意識することもなく、毎朝仏壇に向かって手を合わせる信仰を持たなくなったわれわれが、古来からの潜在意識に立ち返るためのひとつの方法を、アートに求めることを推奨します。

 アートといっても特別の才能が要ることではありません。山寺へ行くと、「この村の人たちが詠んだ俳句だよ」と、木札に書かれた何十もの俳句が欄間に掲げられていたりします。戦前でも国民の8割以上 が小学校を卒業しており、農家の人々もしっかり読み書きはできたのですね。その彼らは鳥のこえをきき、風の音をきき、虫の音をきいては俳句を詠みました。

 〝自然のなかで生かされているという意識をもつ〟ということ――それこそが、アートなのではないでしょうか。100年前、西洋ではすべてのアートは絵画であれ音楽であれ、「神へ捧げられるもの」でした。日本人の信仰は、八百万神信仰。生きとし生けるすべての存在に神が宿ると考えていたわけですから、自然を詠むことがすなわちアートなのです。

 そう考えるとアートとは、ごく一部の才能あふれる人だけにゆるされる高尚なことなどではなく、人が、生活のための糧=物質的価値を増やすこと以外になにか〝答えのない問い〟を求めたときに、ふと感じる〝ヒト以外の存在(GODや自然)のありがたさに歓喜した結果〟なのではないでしょうか。 

「人間」と書くのは社会科学。自然科学(理科)では「ヒト」

 ところで皆さんは、「理科」と「社会科」の違いって、なんだと思いますか?

 理科は頭のイイ子が得意なやつで、そんなに勉強が好きじゃない人は社会科のほうが向いている?
 そんなことはありません。夏休みにセミの抜け殻をひたすら集めていた男児は理科系なはず。
 アメリカでは東西冷戦が終わってしまってから軍需産業に人材を割かなくてもよくなったので、理系に進むはずだった人材の多くが数学から金融工学という分野へ流れ、サブプライムのようなマネーの錬金術を次々と編み出し、その末路がリーマンショックだったと言われています。

 そう考えたら、理系の人たちがやってきたことも、必ずしもそんなに緻密ではないし、賢いことだとも言えなくなってきませんか?

  • 社会科学は、人間社会だけを研究対象にする学問
  • 自然科学(理科)は、宇宙や自然界などありとあらゆる環境を研究対象にする学問。人間も生き物の一種としてしか捉えないので、「ヒト」と書く。

 いまはAIに「理科と社会科の違いは?」ときけば一発で明快に答えてくれますが、じつはわたし自身もその違いをある人から説明されたのは、30代になってからのことでした。

 え? じゃあアートが「人間さま以外のことにも目を向けて感謝すること」なんだったら、自然科学とアートって近いじゃん! わぉ、なんだか新鮮な驚き。

 というわけで縁空では、お天道さんの力を少しでも感じられる人を増やすべく、「なんでもボタンひとつで済ませる生活を、ちょこっとだけ見なおそうキャンペーン」を地味に展開しております(^^♪


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縁空のオケイ/勝 桂子

縁空のオケイ/勝 桂子

宗教法人専門特定行政書士/仏教系FP/葬祭カウンセラー。 遺言相続、任意後見などの相談に応じるなかで、お金の心配ばかりの終活に疑問を感じ、古溪光大僧侶とともに縁空合同会社を起業。業務執行責任者として、葬祭カウンセラー認定実用講座などを運営。 『いいお坊さん ひどいお坊さん』(ベスト新書)、『心が軽くなる仏教とのつきあいかた』(啓文社書房)著者として、全国各地の僧侶研修に登壇。AFP。東京都行政書士会板橋支部役員。民生児童委員。 🔶J-FLEC認定アドバイザー https://api.biz.j-flec.go.jp/advisor/advisor_profiles 🔶Lit-link https://lit.link/369okei

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