日本の独居率とその影響
国立社会保障・人口問題研究所が先月出したプレスリリース「日本の世帯数の将来推計(全国推計)-令和6(2024)年推計-」によると、2030年代前半に平均世帯人員は初めて2人を割り込み、2050年には単独世帯が44.3%に達すると予測されています。
特に65歳以上の男性の独居率は16.4%から26.1%に、女性は23.6%から29.3%に増加するとみられています。この推計は、日本社会に大きな変化が訪れることを示唆しています。
独居の高齢者が増えることで、社会的孤立の問題が深刻化します。孤立感や孤独感が増すことで、心身の健康に悪影響を及ぼすリスクが高まります。高齢者が孤独に感じることなく、豊かな生活を送るためには、仕事以外の社会的なつながりを築くことが重要です。
〝4割以上が単独世帯になる〟っていうのは、ちょっとショッキングかも
だけど自分も独身だし、このままいくなら、2050年にも独居でいるんじゃないのかなぁ
民生委員として高齢者の個宅訪問などしていると、独居のかたと話す機会は非常に多いです。
デイサービスや定期的な文化活動等に通われていれば人との会話もあるのですが、「数週間、誰とも会話をしていない」というような生活を送られているかたも、相当数いらっしゃいます。
この先の20年余り、事務作業や単純作業はロボットがしてくれるようになると言われています。独居のかたの対話相手も、ロボットに託されてゆくのかもしれません。
しかし、人間が社会的な生きものである以上、〝人と対話したい〟という欲求が、潜在的にはあるのではないでしょうか。
仕事以外の社会的つながり、持っていますか?
この推計は5年ごとに行われており、世帯の家族類型別(「単独」「夫婦のみ」「夫婦と子」「ひとり親と子」「その他」の5類型)にみた将来の世帯数を求めることを目的としています。今回は令和2(2020)年の国勢調査を基に、2020~50年の30年間について将来推計を行ったのだそうです。
2020~50年の間に、高齢単独世帯に占める未婚者の割合は、男性33.7%→59.7%、女性は11.9%→30.2%となり、近親者のいない高齢単独世帯が急増する見込みです(グラフは引用データから著者作成)。
自分が育った家庭以外に、新たな〝家族〟を持たずに中高年になる人が、これだけ多くなるのです。
高齢になってから独居であっても、連絡のとれる子や甥姪がいれば、急病のときなどに助力は期待できるかもしれません。しかし、未婚のまま高齢となる人がこれだけ増えるとなれば、社会の仕組みとして、なんらかの〝つながり〟を構築してゆく必要性が感じられます。
現役で仕事をしている間は、飲み仲間もあり、余暇にスポーツや旅行を楽しむ仲間もあり、人生を語らうこともできるでしょう。ところが健康上の理由で飲酒を控えるようになったり、身体的にも経済的にも遠出ができなくなってくると旅先で人生を語らった仲間たちとの縁もしだいに遠のき、若い頃に築いたコミュニティは頼れなくなってゆきます。
なにかしら、高齢になってからにふさわしい、肩ひじ張らずに生きる意味を語らえるような、昔の井戸端会議のようなコミュニティの構築が、急がれるように思えます。
社会的つながりの重要性
〝比較しなくていい〟、〝やすらげる〟コミュニティの創設が急務
高齢を迎える独居の人々が孤立することなく生活するためには、地域コミュニティや趣味のサークル、ボランティア活動などを通じて、積極的に人と関わることが求められると信じられており、昨今は社会福祉協議会や市民団体が積極的に、健康体操や認知症予防のイベントを企画しています。
また、近年ではオンラインでのコミュニティも活発化しており、SNSやビデオ通話を利用した交流が増えています。これにより、物理的な距離を超えて人とつながることが可能となり、社会的孤立を防ぐ手段が広がっています。
もちろん、そうしたコミュニティは有意義です。日常生活でのちょっとした会話や、共通の趣味を持つ仲間との日々の交流は、大きな心の支えとなります。
しかし、こんな声も耳にします。
そういう「いつまでも若く」系の集まりって、あまり興味がないのよね……
詳しく話を聴いてみると、
- 誰それが入院した、施設入所した、という話が出るとせつなくなる。
- 自分もいずれ病院か施設に入れば、コミュニティの外に出ることになる
- 技量を競ったり、健康自慢をしたりする人たちと一緒にいても疲れる
などなど。
もしかすると、人生の午後に必要なのは、〝比較しなくていい〟〝それぞれの体験が尊重される〟、もっとゆったりとした語らいの場なのではないか、と感じることもあります。
葬祭カウンセラーの役割
社会的つながりのなかで重要視されるべきなのは、「答えのない問い」を共有できる仲間を持つことである、と私ども縁空では考えています。
「答えのない問い」――すなわち「なぜ生きる?」といった哲学的、文学的、精神文化的な問いは、比較の対象にならないからです。ひとりひとりの考えや意見が尊重され、たがいに影響をおよぼし、皆が少しずつ思考を深めてゆけるような場。
縁空塾のメインコンテンツである「葬祭カウンセラー認定実用講座」は、そのようなコミュニティを創出できる人材を養成します。受講生と修了生は事例研究グループを組織し、専門職と一般市民とがそれぞれの目線で、死と葬祭について語らい、人生のゴールをみすえて対話してゆきます。
葬祭カウンセラーは、死生観や人生の意味について話し合う場を提供し、心のケアを行います。
葬祭カウンセラーとの対話は、親しい仲間を亡くして孤独を感じる高齢者にとって大きな支えとなります。
また葬祭カウンセラー自身も、葬祭カウンセラー仲間とのあいだで自分自身の人生をたえずふり返り、未来に対する不安を共有することで、心の安定を得ることができます。
もちろん、葬祭カウンセラーは葬儀に関する具体的な相談にも応じるため、身近な人を亡くした際の心のケアや、実務的なサポートも提供します。
葬祭カウンセラーの可能性
高齢者の人生経験を活かす
葬祭カウンセラーは、特に高齢者にとって重要な役割を果たします。高齢になればなるほど、身近な人の葬儀に出席する機会が増えます。80代や90代になると、多くの友人や家族を見送る経験を持つことが一般的です。こうした経験は、葬儀に関する知識や心のケアに役立ちます。
高齢者が葬祭カウンセラーとして活躍することで、自分自身の経験を活かし、他の人の支えとなることができます。また、自分が相談に乗ることで、社会的な役割を感じ、充実した生活を送ることができるのです。高齢者が葬祭カウンセラーとして活動することで、人々に寄り添い、共に答えのない問いを探求する仲間を作り出すことができます。
社会的貢献と自己実現
さらに、高齢者が葬祭カウンセラーとして活躍することは、社会的貢献にも繋がります。
多くの人が孤立感を感じる現代社会において、心のケアを提供する存在は非常に貴重です。
葬祭カウンセラーとしての活動を通じ、多くの人に希望と安心を提供することで、充足感を得ることにもつながります。
葬祭カウンセラーは、自分自身の経験を友人知人や地域の人たちへ伝えることで、自己実現を図ることができます。葬儀に出る経験は、年齢を重ねるほど増えますので、葬祭カウンセラーとしての経験や力量は、年齢を重ねるとともにどんどん増えてゆきます。この点が、最新情報を追い続けなければ劣化してしまうIT関連のスキルなどとは大きく異なります。
歳を重ねるほどに、充実感を得ることができる――葬祭カウンセラーとしての活動は、高齢を迎えゆくかたにとって、大きな生きがいとなるでしょう。
まとめ
日本の独居率が4割を超える未来において、社会的つながりを持つことがますます重要になります。特に高齢者が孤立することなく、豊かな生活を送るためには、地域コミュニティや趣味のサークル、オンラインでの交流など、多様な手段を通じて人と関わることが必要です。
そのようななかで葬祭カウンセラーの存在は、死生観や人生の意味について深く語らう場を提供することで、多くのかたの支えとなりえます。葬祭カウンセラーとして活躍することで、高齢になっても自分自身の経験を活かし、他の人の支えとなり、社会的貢献を果たすことができるのです。
皆さんも、お住まいのエリアで葬祭カウンセラーとして活躍することで、人々が孤立することなく、充実した人生を送ることができる地域の実現を目指してみませんか?
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